6月13日(火)の新聞を5紙も並べて、祖母がつぶやいたのだ。

 「見出しに『日本が負けた』とか『ニッポン惨敗』だとか書いてあるけど、本当かねぇ。戦争中なんて、毎日毎日、日本が勝った、日本の快進撃、なんて書かれていたけど、全部ウソだったのにねぇ。結局、負けてしまったじゃないか。大本営発表なんて、眉唾だよ」

 いや、おばあちゃん、もうそんな時代じゃないんだよ。

 オーストラリアに負けたんだよ。

  「そうかい? じゃあ、もう、東京オリンピックは面白くなくなったね」

 ボケているのである。

 もう90を超す年齢だから、今がどの時代なのかがわかっていない。

 わたしのことを、当時、隣に住んでいた「ヒデスケさん」なんて呼ぶのだ。

 だが、新聞情報に対する態度は、この一言で理解できるであろう。

 大本営発表によって翻弄されたことが、身にしみこんでいるようだ。

 だから、自分の目で確かめたことしか信じていない。

 銃後を守り抜いてきた女性のしたたかさだろう。

 

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